インプラント

【歯科医師が解説】歯が1本でも無くなったら?選べる3つの治療法とその注意点


歯が無くなったらどうなるの?大切な歯を守るための治療法

皆さん、こんにちは!こいわ歯科クリニック 副院長の小岩千祐です!!

歯を失った時にはブリッジ、入れ歯、インプラント、治療しないなど様々な選択肢があります。

「まさか自分が…」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は日本人の多くは何らかの理由で歯を失っています。虫歯や歯周病、あるいは思わぬ事故などで、大切な歯が1本でもなくなってしまった時、「このままにしておいても大丈夫かな?」と考える方もいるかもしれません。

でも、ちょっと待ってください!

歯が抜けたままの状態で放っておくとお口の中だけでなく、体全体にまで様々な問題が起こり始める可能性があります。

今回は、なぜ歯がなくなった部分をきちんと補う必要があるのか、そして、どんな治療法があるのかを、じっくりお伝えしたいと思います。

歯を失ってしまう 8020財団 https://www.8020zaidan.or.jp/achieve/cause_measure.html


「歯が1本無くなっただけ」が、なぜ問題なの?

お口の中の歯は、一本一本が独立しているように見えて、実はチームワークで働いています。まるで、たくさんの本がぎっしり詰まった本棚のように、それぞれが隣の本と支え合い、上の段の本と下の段の本がきちんと同じ高さで並ぶことで、全体が安定しています。

でも、もしその本棚から大切な一冊がぽっかり抜けてしまったらどうなるでしょうか?

・隣の本が傾いてくる

本棚に隙間ができると、その両隣にあった本は、今まで支えてくれていた隣の仲間がいなくなったことで、ぐにゃっと傾いてきたり、倒れ込んできたりしませんか?

お口の中でも同じことが起こります。歯が抜けたスペースに向かって、隣の歯がゆっくりと傾いてくるんです。歯が傾くと、歯並び全体がガタガタになり、隙間が増えて食べ物が挟まりやすくなります。

そうなると、歯ブラシが届きにくくなって、虫歯や歯周病になるリスクがぐんと高まってしまいます。さらに、歯並びが乱れると、噛み合わせのバランスも崩れて、特定の歯にばかり強い力がかかりすぎたり、歯が割れやすくなったりすることもあります。

・噛み合う歯が伸びてくる

本棚の例で言えば、もし抜けた本の真上に別の本が置いてあったら、下の支えがなくなったことで、その本が少しずり落ちてきてしまうかもしれませんよね。歯も同じで、下の歯がなくなったのに、それと噛み合う上の歯がそのまま残っていると、その歯は「噛み合う相手」を探して、歯茎からニュッと伸びてきてしまうんです。これを「挺出(ていしゅつ)」と呼びます。

伸びてきた歯は、さらに噛み合わせを悪くする原因となり、顎の関節に不自然な力がかかって、顎関節症(顎が痛い、口が開きにくい、カクカク音がするなどの症状)になるリスクが高まります。また、伸びすぎた歯が歯茎に慢性的に当たって傷ができたり、口内炎ができやすくなったりすることも珍しくありません。

・食事がしにくくなる

特に奥歯を失ってしまうと、食べ物を効率よく噛み砕くことが難しくなります。想像してみてください、硬いお肉や野菜をしっかり噛めないと、食事の時間が楽しめなくなってしまいますよね。十分に噛まれないまま食物が胃に送られると、胃や腸に大きな負担がかかり、消化不良や栄養の吸収不良につながることもあります。

しっかり噛むことは、唾液をたくさん出して消化を助けたり、脳を活性化させたりする大切な行為です。噛む機能が低下すると、体全体の健康にも影響が出てくる可能性があるのです。

・見た目が気になる(笑顔に自信が持てなくなる)

前歯など、人から見えやすい部分の歯がなくなると、見た目に大きな影響を与えます。笑顔の時に歯の隙間が目立ったり、息が漏れて発音がしにくくなったりすることもあります。見た目を気にして、人前で思いっきり笑えなくなったり、話すことに抵抗を感じたりするようになり、精神的なストレスや自信の喪失につながってしまうこともあります。


そもそも、なぜ歯が無くなってしまうの?

歯を失う主な原因は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。これらの原因の多くは、日頃の丁寧なケアや、定期的な歯科医院でのチェックによって予防できるものです。

1.虫歯(う蝕)

歯に穴が開いてしまう「虫歯」。初期の小さな虫歯なら簡単に治せますが、放置して進行してしまうと、歯の神経まで細菌が達して激しい痛みが生じます。さらに進むと、歯の大部分が溶かされ、歯の根っこまで細菌に感染してしまうことがあります。こうなると、残念ながら歯を残すことが非常に難しくなり、抜歯せざるを得ない状況になることがあります。

2.歯周病(歯槽膿漏)

歯周病は、歯を支えている骨や歯茎が、歯周病菌によってじわじわと破壊されていく病気です。初期の段階では、歯茎が少し腫れたり、歯磨きした時に出血したりする程度の自覚症状しかないことが多く、痛みもないため、多くの人が気づかないうちに進行してしまいます。しかし、進行すると歯を支える骨が溶けてしまい、歯がグラグラになって、最終的には自然に抜け落ちてしまったり、抜歯が必要になったりします。

3.歯の破折

硬いものを強く噛んだ時や、転んだりぶつかったりした時の衝撃、あるいは噛み合わせが悪いことによる長期的な負担が続くと、歯にひびが入ったり、根っこが割れてしまったりすることがあります。特に、以前に神経を取る治療をした歯は、水分が失われてもろくなっているため、割れやすくなります。歯が割れてしまうと、その隙間から細菌が侵入し、感染を引き起こすため、ほとんどの場合、抜歯が必要になります


歯が無くなった時の治療法にはどんなものがあるの?

歯を失ってしまった場合に、その部分を補い、お口の機能と見た目を取り戻すための治療法は、主に3つの選択肢があります。それぞれの治療法には「こんな良い点がありますよ」というメリットと、「こんな点に注意してくださいね」というデメリットがありますので、ご自身の状況に合わせて、歯科医師と一緒にじっくり考えていきましょう。

1.ブリッジ

なくなった歯の両隣にあるご自身の歯を少しだけ削って土台にし、そこに橋をかけるように、人工の歯を連結して被せる治療法です。ご自身の歯にしっかりと固定されるため、取り外しの手間はありません。

・ブリッジの「いい点」

 保険で治療できるものがある:保険適応の材料を選択した場合、費用を抑えて治療できます

 治療期間が短い:比較的短期間(数週間〜数ヶ月)で治療が完了し、すぐに噛めるようになることが多いです。

 自分の歯と同じ感覚:ご自身の歯に固定されるので、入れ歯のような「取り外し」が不要で、違和感が少ないと感じる方が多いです。

・ブリッジの「気をつけたい点」

 健康な歯を削る必要がある: 土台となる健康な歯を削る必要があります。一度削った歯は元には戻せません。

 土台の歯に負担がかかる: なくなった歯の分の噛む力も土台の歯が負担するため、その歯に過度な負荷がかかり、将来的に虫歯や歯周病、または割れてしまうなどのトラブルを起こしやすくなるリスクがあります。

 お手入れが少し難しい: 橋のように連結されているため、歯と歯の間やブリッジの下の部分に食べ物が挟まりやすくなります。通常の歯ブラシだけでは届きにくいので、専用の歯間ブラシやフロスなどを使って、より丁寧にお手入れする必要があります。これを怠ると、土台の歯が虫歯や歯周病になって、ブリッジ全体をやり直す必要が出てくることもあります。

2.入れ歯

ご自身で取り外しができるタイプの人工の歯です。残っているご自身の歯に金属のバネをかけたり、歯茎の粘膜に乗せたりすることで安定させます。歯が何本か残っている場合の「部分入れ歯」と、全ての歯がない場合の「総入れ歯」があります。

・入れ歯の「いい点」

 健康な歯をほとんど削らない: ブリッジのように大きく健康な歯を削る必要がほとんどありません

 保険がきく場合が多い: 費用を抑えて治療できることが多いです。

 修理や調整が可能: 万が一壊れてしまったり、お口の状態が変わったりした場合でも、修理したり調整したりして対応できることが多いです。

 ご自身で清潔にできる: 毎日取り外して、専用のブラシや洗浄剤を使ってきれいに洗うことができるため、衛生的に保ちやすいです。

・入れ歯の気をつけたい点

 慣れるまでに時間がかかる: お口の中に「異物感」があるため、最初は違和感があったり、発音しにくかったり、吐き気を感じたりすることもあります。慣れるまでに数週間から数ヶ月かかることがあります。

 話しにくい・食べにくいと感じることも: 入れ歯の大きさや安定性によっては、発音がしにくくなったり、食べ物の味や温度が感じにくくなったり、天然の歯に比べて噛む力が弱くなったりすることがあります。

 金具の見た目: 金属の金具が口を開けた時に見えてしまうことがあり、見た目を気にする方もいらっしゃいます。(最近では、金属が見えにくいタイプの入れ歯もありますが、保険適用外となることが多いです。)

 毎日の取り外しが必要: 食後や就寝前など、毎日ご自身で取り外して洗浄する手間が必要です。

 安定性が劣る場合がある: 噛むと少し動いたり、外れたりすることがあります。また、歯茎は少しずつ形が変わっていくため、入れ歯も定期的に調整したり、作り直したりする必要が出てきます

3.インプラント

歯がなくなった部分の顎の骨に、生体になじみやすいチタン製の人工の歯の根っこ(インプラント体)を外科手術で埋め込み、その上に人工の歯を被せる治療法です。骨とインプラント体がしっかりと結合することで、ご自身の歯のように安定し、機能します

インプラントの「良い点」

 健康な歯を削らない: 周りの健康な歯を削ったり、負担をかけたりする必要がありません。これは、長期的に見てご自身の残っている歯を守る上で非常に大きなメリットです。

 天然歯に近い感覚で噛める: 顎の骨に直接固定されるため、まるでご自身の歯が戻ってきたかのように、しっかりと力を入れて噛むことができます。違和感もほとんどなく、食べ物の味や温度も自然に感じられるため、食事がより一層楽しめます。

 見た目がとても自然: 非常に精密に作ることができ、見た目もご自身の歯と区別がつかないほど自然で美しい仕上がりになります。笑顔に自信が持てるようになります。

 発音への影響が少ない: 固定式であるため、他の治療法に比べて発音しにくさも少ないです

インプラントの「気をつけたい点」

 保険がきかない(費用が高額): 残念ながら、インプラント治療は健康保険が適用されない自費診療となるため、費用が高額になります。

 外科手術が必要: 顎の骨にインプラント体を埋め込むための外科手術が必要です。手術には少なからずリスクが伴い、全身に病気をお持ちの方など、治療が受けられないケースもあります。

 治療期間が長い: 手術からインプラントと骨が結合するまでの期間(通常は数ヶ月)、そして最終的な歯が入るまでに、比較的長い期間がかかることがあります。

 骨の状態による制限: 顎の骨の量や質が十分でない場合、インプラント治療ができないことがあります。その場合は、骨を増やすための追加処置が必要になることもあり、その分治療期間や費用が増える可能性があります。

 定期的なメンテナンスが重要: 治療後も、インプラントを長持ちさせるためには、ご自身での丁寧な歯磨きに加え、歯科医院での定期的な専門的なメンテナンス(クリーニングや噛み合わせのチェックなど)が非常に重要です。これを怠ると、「インプラント周囲炎」という歯周病に似た病気になり、せっかく入れたインプラントを失ってしまうリスクがあります。

当院のインプラント治療について https://koiwa-implant.jp/implant/

4.治療しないという選択肢

「何もせずにそのままにしておく」という選択肢も理論上はありますが、私たち歯科医師としては、長期的な視点から見て、これは強くお勧めできません

「治療しない」の「良い点」(短期的には)

 当面の治療費用がかかりません

 健康な歯を削ったり、手術を受けたりする必要がありません。

「治療しない」の「気をつけたい点」(長期的に見て)

 上記でご説明したような、「隣の歯が傾く」「噛み合う歯が伸びる」「食事がしにくくなる」「見た目が気になる」といった、歯がなくなったことで起こる様々な問題が改善されず、時間とともに確実に悪化していきます

 最終的には、残っている他の健康な歯にも過度な負担がかかり、それが原因でさらに多くの歯を失うことになったり、お口全体のバランスが崩れて、より複雑で費用のかかる大規模な治療が必要になったりするリスクが非常に高まります。

 結果として、お口全体の機能が低下し、全身の健康や生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼすことにも繋がりかねません。


あなたに合った治療法を一緒に見つけましょう

歯を失うことは、誰にとっても不安なことです。しかし、現代の歯科医療には、失われた歯を補い、お口の機能と美しい見た目を取り戻すための様々な治療法があります。

どの治療法が患者様お一人おひとりに最も適しているかは、残っている歯の状態、歯茎や顎の骨の健康状態、全身の健康状態、普段の生活習慣、治療にかけられる期間や費用、そして何よりも「最終的にどうなりたいか」という患者様ご自身のご希望を詳しくお伺いした上で、私たち歯科医師が丁寧に診断し、一緒に考えていくことが大切です。

当院では、患者様が安心して治療を受けられるよう、それぞれの治療法の詳細な説明、メリット、デメリット、費用、治療期間、そして治療後のケアについて、分かりやすく丁寧にご説明させていただきます。

「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思うような小さな疑問でも、どうぞ遠慮なくご質問ください。一緒に、患者様にとって最善の選択肢を見つけ、健康的で快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。

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